石榑峠


2009年5月1日
 

  ゴールデンウィーク3日目、酷道とは云えどちらかといえば「ぬるい」方に分類されるR421、石榑峠へ行ってきた。しかしてその実態は…

 三重と滋賀をつなぐ4本の国道のうち、酷道として名高いのが421号であり、そして石榑(いしぐれ)峠である。
 曰く「狭隘、急坂」というのは酷道の定番としても、「峠にコンクリートブロックのゲートが存在する」に至っては??

 以前から気になってはいたのであるが、三重県山間部は心理的に遠い(笑。実際に行ってみると近かった)ので、なかなか機会が見つけられなかったのである。

 今回、ゴールデンウィークの1日を利用してR1の三重滋賀県境、鈴鹿峠の南にある神大滝林道への挑戦を計画したのであるが、林道を三重県側から滋賀県側へ抜けると、当然の事ながら戻ってこなくてはならない。神大滝林道なぞ往復するものではないので、必然的に他の道、それもより北側にある道を選択することにした。R1で戻るのはナンセンス、R306とR477は走破済み、となれば話は簡単でR421で戻る事に決定した。

 
 神大滝林道を滋賀県側、甲賀市の大原ダムへ抜けてから県道やそりゃあもうすごい広域農道をたどって何となく北上、R421へ出た。


 標識を右折、桑名方面が石榑峠のある方向である。が、小さくではあるがこの時点(石榑峠までまだ10数キロ)で既に車幅2m以下と書かれている。この気合の入りようは一体…。

 なお、蛇足であるがこの先にある永源寺ダムの回りは、バイクにとっては結構面白い道である。







 そして暫く行くと通行止の電光掲示板。
 車はダメでもバイクなら行けたりする場合もあるので、とりあえずそのまま直進。この時点ではまだ大したことは無かろうとタカをくくっていたのだが…。










 でたよ、通行止の満艦飾…。

 どれを信用すればいいんだか…って、全部通行止めって書いてあるんだってば(笑)。一番奥の看板なんか「絶対」って言ってるし。









 その中でも秀逸なのがこの看板。車が泣いてる!?
 お役所にしてはマンガチックな看板に仕上がっているが、問題はその両側にあるブロック。
 そう、問題のそれを見に来たのである。








 通行止の満艦飾とは裏腹に、バリケードは全くやる気がない。バイクどころか、乗用車も自在に出入している始末である(後で気付いたのだが、この先で工事をしているためその車両が自在に出入する必要があったのである)。


 バリケードを越えてすぐのところに、国道421号の標識があった。こんな国道標識はここ以外では見たことがない。しかも木製である。杭の部分には滋賀県の表示があるので、正規のもののようではあるが…。








 国道421号は石榑峠下のトンネル施工、及びその前後の拡幅(とバイパス化)を行っているのであるが、不図、通りすがりに工事中のバイパス橋桁下を覗くと…


 ??? 真ん中辺りに何やらさっき見たようなものが…

 
 どうやら工事の残土、土砂と運命を共にするようである。いいのか?一応、正規の標識ではないのか??









 暫く行くと、またもや通行止の満艦飾。しかし今度は本気モードが漂っている。奥のバリケードはコンクリートブロックを使った本格的(?)なものだ。

 そしてこの後、確かに峠までの路面にはこぶし大の落石がゴロゴロしていたのである。








 そして意外とあっさり登頂完了。ここが石榑峠、そして名物「石榑ブロック」である。前後の道幅を見るとなぜここでブロックでもって道幅を2mに絞らねばならないのか、判然としないだろうが、三重県側へ下っていくとその程度の道幅しか無いらしいのである。

 ちなみに、ブロックの内側には無数の傷跡が付いていた。数多の車(中には新車もあったであろう)が果敢に石榑へ挑戦し、そしてしっぺ返しを食らった証拠である。





 KDXと比較するとこんな感じである。KDXの方が、長い。











 さて、石榑ブロックを堪能した後は三重県側へ下って行くことにする。

 峠の直下は急勾配の下りなのだが、そこでいきなり土砂崩れ。それを恐る恐る通過して暫く走った後に出くわした、2ヶ所目の土砂崩れが左写真である。 
 滋賀県側は落石が多かったのだが、三重県側は土砂である。しかも白くて粗目の砂のような土砂、あまり見たことは無い部類の土である。
 砂っぽいので下手すると滑る、しかもここの土砂はガードレールよりも上に盛り上がっているのである。

 ちなみに、崖下へとガードレールに立てかけられた梯子が分かるだろうか?誰かが下りているらしい。復旧工事の事前調査かも知れない。


 そして3ヶ所目の土砂崩れ。
 一見、擁壁の補修が完了して土砂をどければ復旧終了のようにも見える。が、ガードレールが無い。
 そして白い石(ブロック?)で構成された擁壁の上に乗っているアスファルトを良く見て欲しい。何と、破断面がそのままである。更に良く見ると、道幅も狭い。
 即ちここは、路肩の崩壊(及び上からの土砂崩れ)により、半分くらいの幅になってしまった道路の法面に暫定処置として擁壁を付け加えたに過ぎないらしいのである。そして、このような復旧が許されるということは、もはや石榑峠は捨てられた(今後開通の予定無し)のではないか? 現在工事中の石榑トンネル及びバイパスが完成すると、たしかにこの辺りは不通となっても支障はないかもしれないが…。


 そして4ヶ所目の土砂崩れ、こいつはいけなかった。
 土砂がガードレールの上まで盛り上がっている、しかも通過ラインはその真上。おまけに傾いていやがる…。











 徒歩で反対側へ抜けて、振り返って見る。
 来た側からは、坂を上って一旦平場へ出てからもう一度上がって、そして一気に下っている。通過ラインはごく狭く、そして谷側へ傾いている。しかも、砂状の滑りやすい土砂である。万が一にも滑ったら、谷底への滑落しかない。崩土はガードレールを乗り越えているのである。

 さすがにこれは、行けない…。











 止むを得ず、石榑峠越えの挑戦はここで引き返す事にした。

 ほら、KDXも「もう帰ろうよ」と云っているではないか…。




 賢明なる読者諸兄は既にお気付きだろうが、4ヶ所目の土砂崩れには轍の跡がある。実は、ここを越えて行った勇者がいるのである。
 KDXに乗る氏とは石榑峠の滋賀県側で出会った。そして、とんでもなく酷い土砂崩れがあること(氏は「めっちゃ面白い道」と云っていたが)、それを乗り越えても三重県側出口にはゲートがあり通り抜けが不可能である事(即ち引き返すしかない)を語った。
 そう、4ヶ所目の土砂崩れを決死の思いで乗り越えてもその先はゲート、通過は不可能なのである。引き返すには、再度必死の思いで4ヶ所目の土砂崩れを超えなければならない。これは筆者にとって、ロシアンルーレットを2回引くようなものである。しかも、峠から下って来た時は土砂崩れを2段階で上ればよいが、引き返す時はそれを一気に上らねばならない(そのような形に崩れている)。加えて激坂になっていて、私の腕では上れるかどうか分からない。その上、失敗 ⇒ 転倒 ≒ 転落 であることは想像に難くない。万が一転落を免れたとしても、KDXは土砂崩れとゲートの間に閉じ込められて、放棄より他は無くなってしまう。
 というような諸々が4ヶ所目の土砂崩れを目の前にして頭の中で巡った末の撤収であったのだ。
 退くのもまた勇気、である(言い訳)。


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