神大滝林道
2009年5月1日
ゴールデンウィーク3日目、KDXに乗り始めた頃からその噂を聞いていた神大滝林道(坂下峠)へ挑戦した。その真実は、噂に違わないものであった。 |
坂下峠。三重滋賀の県境にある峠であり、国道1号線の南、林道神大滝線にそれはある。
KDXに乗り出した頃から、その噂は聞いていた。曰く「超ハードなガレ場あり。自然の強さを身をもって知る。腕に自信のある者のみ通行可」、と。
ここまで挑戦的な言質を弄されては行かざるを得ないのだが、如何せんオフロードに復帰したばかりの昨年当初は腕が覚束ない。何とか走れるようになった昨年後半には、今度はタイヤが覚束なくなっていた。
と、色々言い訳をしているが、少々逃げていたのも事実である。
しかし。
オフにも十分慣れてきた、タイヤもこの春交換したばかりで当然ながらグリップは上々。しかも今年はゴールデンウィーク前から晴天が続き、ダートの状況も良好である事が期待できる。となれば最早言い訳のネタは無く、行くしかないのである。
神大滝林道へはR1が上下線で分離しているところから分岐していくのであるが、これが分かりにくい。上り線、下り線、どちらから来ても分岐は追い越し車線、しかもブラインドになったコーナーにある。気付いた時には通り過ぎてしまう可能性があることは地図を見ていれば予想できるのであるが、上下線が分離しているのでUターンはできない。かといって、交通量(殊更にトラック)の多いR1で分岐を探して徐行などはできないし、分岐を発見次第、運良く追い越し車線へ車線変更ができるとも限らない。
1〜2往復する覚悟で現地へ赴いたのであるが、GWでしかも朝早かったせいかほとんど車も走っていず、あっさりと林道入口へ到達することができた。
林道の三重県側入口にはゲートがあるが、なぜか下側の横バーは右半分にしかない。自転車ならそのまま、KDXでも多少傾けてやれば通れる高さである。
尤も、ゲートの右側にも歴代の挑戦者達による轍がついているが。
林道は、幅1車線強。舗装のまま強目の勾配でグングンと高度を取っていく。
そして、頻繁に現れたのが、路面を斜めに横切るこの黒いゴム(?)である。林道へ行くと時々出くわすのだが、ここでは頻繁に現れる。しかも、他地域のゴムと違ってここのビラビラ(笑)は背が高く、硬い。まだ若い証拠だろうか?通過すると意外とハンドルを取られたりするので、油断はできない。しかし何故か路肩から1/3くらいの所に必ず切れ目があるので、気を付けてそこを通るようにする。
これは峠へ上って行く途中で見かけた風景であり、何となく面白かったので紹介しておく。
砂防ダムが溜めた土砂の中で木々が育っているのである。
ゲートから15分。忽然と舗装が切れ、ついにダートが現れた。神大滝林道の本領が発揮されるのはここからである。
路面がダート化するとすぐにこいつが現れた。
KDXの左側やや前方の路面に鉄板が敷かれている。そして、道幅はKDXと大差無い。
当然だが、鉄板の下は奈落の底である。こんな車で入って来れないような所へわざわざ鉄板を持ってくる奇特な人がいるとは少々面白いが、おかげで心理的には随分助かっている。それが無ければここの通過は恐怖以外の何物でもなく、引き帰した可能性だってあるのである。
恐る恐る第一関門を通過すると、すぐに噂のアイツが見えてきた。
神大滝林道名物、壁である(笑)
いつも思うのだが、写真で勾配を伝える事は非常に難しい。
KDXの前方に見える岩は、ほぼ垂直に切り立っているのである。その段差、約1m。実は、晴天続きの後を選んでここへ来た理由がこれである。岩が雨で濡れた状態では、タイヤがまともにグリップするとは思えない。即ち、ここで敗退の可能性が非常に高くなるからである。
ご覧の通りの狭隘な路面、助走区間もまともに取れないが、できるだけマシンを後退させたところでフルスロットル、クラッチミート。
岩へ激突するかと思ったが、何とか前輪はその上へ。私とてこの1年、伊達に過ごしてはいないのである。
ところが、後輪が上がらない。危うくエンストしそうになったが、こんな所でエンストして亀の子状態になろうものなら、ニッチもサッチも行かなくなるのは自明の理である。低下しかかった回転数を回復すべく、半クラッチでアクセルを開ける。KDXが咆哮をあげると共に最後の手段、足で地面を蹴る。「上がれっ!」
エンジンのけたたましい唸り声はそのままに、ついに後輪が岩面を掴んでKDXが壁を上った。
上り切った…。
壁に続く坂の上に、小さくKDXが写っているのがわかるだろうか?
そしてもう一つ、この坂を上った先が峠のはずである。
神大滝林道の最高点、坂下峠に到達。KDXの右手にそれと記す看板が見えている。なお、画面が傾いているように見えるかも知れないが、そうではない。傾いているのは地面の方である。
これが坂下峠の全景である。何とも荒涼たる風景に見えるが、本来の道の高さは左右に生えている木の辺りの高さであろう。こうなるまでに一体どのくらいの時間が必要だったのであろうか。
それにしても、天然の切通を吹き抜ける風が心地良かった。
神大滝林道は三重県側が白眉であるが、滋賀県側も侮れない。
峠から下って程無く、これまた神大滝林道名物コンクリ製の段差である。この時は何気に右(写真で向かって左)から迂回をしたのだが…
右写真は振り返って撮っている。コンクリ製の段差を右へ行くと、写真の左へ出てくる。が、誤って左を選択すると、V字がだんだんと深くなり、写真の右にある藪の中へ突入してしまう。しかも前方には崩落した側溝が転がっており、とても突破できそうにない。戻ろうにも、今度は坂を押して上らねばならない。しかもバックの体勢で、である。
この後、
V字状のクレバスが続くものの、谷側にはバイク1台が楽に通れる土手があったのでそこを走る。このまま楽勝でダート脱出かと思ったが、甘かった。
またもや路肩の崩落(左写真)、しかもここへは急勾配で下った後、同じく急勾配の上りが控えている。加えて、健全な道幅は30cm程度か?鉄網の下はご覧の通り路面は無く、かつ固定されているとは言い難い状態なので絶対にこの上には乗りたくない。
滑ってラインを外さないよう、慎重に下る。崩落部分を通過したら、すかさずフルスロットル。万が一エンストして転倒、滑り落ちるようなことがあれば、人車ともに神大滝林道の露と消えてしまう…。
上り切った…。またしても冷汗三斗の思いである。全くここは気が抜けない。
かつてはこの下に、戦いに敗れたオフロード車の骸があったようだ。今回は確認する事ができなかった。 |
この後もう一ヶ所、衝撃的な風景に遭遇する。
路肩の崩壊であるが、ただの崩壊ではない。
画面右に見えている板状のものは、コンクリート製の擁壁である。つまり、擁壁の半分(画面奥)が崩壊し、そして手前の路盤の土砂がごっそりと流れてしまっているのである。
いくら道幅があっても、こんなところの路盤は全く信用できない。恐々と通過する。
ダートの1km余りに30分以上をかけ、ついに舗装路へと戻って来た。前輪のかかっている、濡れた路面がそれである。
米海軍空母艦上機は、対地攻撃を終えて再び海岸線を越え海上へ出る時、「生還した」との意味をこめて「Feet
Wet!」とコールするらしいが、この場合は何だろう?さしずめ「Feet
Pavement!」だろうか??
あまり格好のいい英文ではないなと考えたが、何れにせよ「生還した!」と思っている事には変わりないのである。
【石榑峠へ】
【KDXツーリング記録2009へ】