三菱みなとみらい技術館
2011年6月5日
 

 はたしてMRJは本当に離陸できるのか!?

 横浜にある三菱みなとみらい技術館。昨年も行ったのだが、内容が一部変更となり、現在絶賛開発中のMRJ(Mitsubishi Regional Jet。三菱重工で開発中の旅客機、80〜90人乗り)の諸々が新しく展示されたようなので、行ってみることにした。


 入場すると正面にMRJの模型。
 全長117.4ft(35.8m)、全幅95.9ft(29.2m)なので海上自衛隊のP−3Cとほぼ同じサイズだ。
 但し最大離陸重量がP−3Cの135000LB(約60ton)に対して最も重いMRJ90LRでも94000LB(42.8ton)なのはエンジンパワーの違い。それでもYS−11が55000LB(25ton)クラスであることを考えれば、飛躍ではある。
(ちなみに最も重い国産機は現在防衛省が開発中のXC−2、313000LB(141ton)である)




 MRJの操縦シミュレータ。分かりやすく言えば高級なテレビゲームだな。もっともこの程度では、そう高級でもないけれど。航空機の開発では、主として操縦性(Handling Qualityという)や安定性(Stability)の評価に用いる。
 主として風洞試験(後で説明)で取得した空力係数を用いて、シミュレータで飛び、悪いところを少しづつ修正していくのだ。
 ところでこのMRJのシミュレータ、1人5分でご覧の通りの人だかり、しかも子供達のために親一人が並んでいる状態なので、とてもじゃないが順番を待ってはいられなかった。どう考えても、小一時間はかかるもんね。




 上左の写真の奥に小さく写っているが、レトロっぽい零戦のポスター(勿論当時モノではない)。他にも三菱製の歴代航空機がこうやってレトロ調のポスターで並んでいた。あまりに雰囲気がいいので、帰りに売店で買って帰ろうと思ったのだが、売っていなかった。販売してよ、三菱さん。






















 風洞試験模型(*)の実物が展示してあった。スケールは5%くらいだろうか。背中に見える白い丸は、模型を組立る時のネジ穴を埋めた跡だ。

*:風洞試験とは、スケールモデルに風をあてて、モデルに発生する力などを計測する試験(実験)である。その結果から、実際の航空機の動きや機体回りの流れが推測でき、設計に役立てることができる。














 ボケてしまったが、ウイングレットの形状。あまり上反角はついていない。











 機首を横から見たところ。先端下部が微妙に反り上がっているのが分かるだろうか?ノースロップの戦闘機、F−20なんかと同じような形状である。こうすることにより大きな機首上げでの胴体回りの空気の流れを改善云々、と昔々NASAの論文で読んだような気がするが忘れてしまった。













 機首先端の回りとエンジンナセルの回りに白い輪が付いているのが分かると思う。風洞と実機では、(レイノルズ数が異なるため)そのままでは完全に空気の流れ(この場合は乱流境界層への遷移点)が一致する訳ではない。このため、実機の流れに合わせるためにトリップワイヤという突起を設けて空気の流れを乱すのである。












 
 垂直尾翼前のドーサルフィンから垂直尾翼前縁、水平尾翼前縁にもトリップワイヤが見られる。



 MRJに関する展示(見て意味のあるもの)はこのくらいだったが、風洞試験模型があったので私的には大満足。ただ、それにしても三菱重工の、XP−1とXC−2でのていたらくを見ていると、MRJは果たして大丈夫か?と言いたくなるのはやむを得ないところだ。
(どういうていたらく?というのは内緒w。防衛省 技術研究本部のHPを読めば分かると思いますよ)


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