他山の石
2009年7月4日
ガレージの無い我家では露天整備が常ではあるが、まさかあんな所でこんな羽目になろうとは。えらいこっちゃ… |
本巣市根尾、折越林道の峠付近で北側へ入って行く林道を見つけた。
折越林道は何度か通ったことがあるのだが、このダートには初めて気付いた。早速入ってみることにする。
いいかげん長いダートだなと思い始めたところで急にエンジンが唸り声を上げた。その直後、ガツッとくる衝撃があったのですかさずクラッチを切り緊急停止。
辺りはご覧の通りの山の中である。
点検するとチェーンが外れていた。
エンジンが急に唸り声をあげたのはこのためのようだ。外れたとたんに負荷が消えて回転が上がったらしい。
チェーンがたるんでいるのは分かっていたのだが、休日の度に出撃していたのでは調整するヒマも無いのである。
ところで、スプロケットを固定しているボルトのうち、一番上の一つが緩んで浮いている。どうやら外れたチェーンがその裏側にあるナットを回したらしい。珍しいこともあるものだ。
ついでにドライブ側のスプロケットものぞいて見る。
何だかおかしい…?
車戴工具でカバーを外してみることにする。
スプロケットから外れて余ったチェーンが、ドライブスプロケットとスイングアーム前端の間にはさまれてしまっている!
最初の「ガツッとくる衝撃」はこれだったのか!!
長いこと単車に乗ってはいるが、こんなことは初めてである。
元にもどそうと引っ張ってみても、スイングアームとの間で完全にかみこんでしまってビクともしない。
こういう時はチェーンを外すのが手っ取り早いと思い、つなぎ目を探す。KDXのチェーンはクリップ式なので、それを外すとバラせるのである。
が、無い。
クリップが、どこにあるのかわからない。
探すこと暫し、やっとあった。写真の緑色のフレームの裏側である。チェーンはかみこんでガチガチに張った状態なので、そんなところへは車戴のプライヤはおろか手も入らない。よりによって…
やはり、力任せに引っ張るしかない。
幸い天候は良好、時刻は午前9時を回ったところで日没までたっぷりと時間はある。しかも弁当水筒持参なので、現地での復旧を諦める(即ちKDXを放棄する)時刻さえ読み間違えなければ、遭難の心配はまず無いだろう。ただ、最寄の民家まで徒歩で3〜4時間だが、はたしてそこは有人だったかどうか…。もし無人なら、人のいる集落まではそこから更に3〜4時間である。
とまあ色々な事が頭をよぎるのだが、とりあえず手は進めなくては。
車戴のドライバを取り出し、ドリブンスプロケットの歯面をテコの支点にしてチェーンを引っ張る、ひたすら引っ張る。飽きたら時々違うところもグリグリしてみる(笑)。
根気よく、2時間余りかけてようやくここまで緩んだ。上の写真と比べると、巻き込んだチェーンの先端が20mmくらい下がっているのが分かると思う。が、これまで。
これ以上は逆にスプロケットとスイングアームの間に、更にきつくかみこんで行く一方である。
途方に暮れかけたが、よくよく見るとここまで緩めばフレームの裏に手もプライヤも入る。そしてそこにはクリップがいるのだ!
フレームの裏に半ば無理矢理プライヤを突っ込み、クリップを外す。本当はラジオペンチの方がやり易いのだが、そんなものは無い。ある物で何とかするのが野戦整備の醍醐味である(笑)。
クリップを外してジョイントを抜くとチェーンが外れた。
クリップは原則再使用不可だが、有無を言わさず再使用で復旧である。
ちなみにドリブンスプロケットの緩んでいたボルトを締めるには、巨大(8mmくらい?)なヘキサゴンが必要なのだが、これまた何故か車戴工具に入っていた。そんなサイズはここにしかないのに、である。さすが、カワサキw
(本当はトルク管理の必要な場所なのだが、さすがにトルクレンチまでは入っていないw)
さて、この整備不良の顛末を読者諸賢の他山の石として頂きたいのであるが、そのためにも最後に教訓をまとめておくことにする。ここに至った経緯については整備不良と言う他何も無いので、無事生還した要因について。
(1)天候が良かったこと
大きな要因であると考える。もし雨が降っていたり、間もなく降ってきそうな状態だったらとかんがえたらぞっとする。落ち着いて作業をするどころではない。
(2)時間があったこと
故障は午前中の早い時間に起きた。日没までは十分時間があり、かつまた考える時間も充分にあったのである。これが日没間際であったりするならば、考える間もなく乗機の放棄である。
(3)食料を確保していたこと
一日中山にいるつもりだったので、たまたま弁当を持っていただけなのであるが、短い時間、例えば半日程度のツーリングでは何も持たずに出かけることも多いだろう。これからは極力何か経口物を持って出るようにした方が良さそうだ。
(4)現在位置を把握していたこと
撤収の時間を正確に組み立てることができた。現在位置の把握は大切である。
これらのどれか一つが欠けていても、KDXを放棄したかもしれない。今回はたまたま運が良かっただけかもしれない。そう考えると、やはり山は侮れないのである。