酷道418号探索記 

2008年4月13日


 岐阜県八百津町内を通る国道418号の丸山ダム(西端)〜笠置ダム(東端)間北岸は、その余りの厳しさから全国屈指の酷道として、その筋のマニアの垂涎の的となっている。今回はKDX購入後の、初の本格的なツーリングとしてトライしてみたので報告する。

 オフ車を買ったら相応の道を走りたいと思うのは当然の道理である。私の場合、それがたまたま柿野谷西洞での雪中行軍であったり、今回の酷道418号であったりしただけだ。深い意味は無いのであり、もし何かがあるとするならばそれは好奇心と冒険心がないまぜになった心情である。
 
 
 と云うような能書きはさておき、丸山ダムからスタートすることにする。
 実はここに到着する直前、八百津町内で信号待ち中にエンジンから異音がし始めた。走行中は良いのだが、ギヤをニュートラルに入れるか、レバーを引いて切った状態にすると、まるで乾式クラッチみたいな音がし始めたのである。

が、しかし。



折角のツーリングでもあるし、走行距離もさほど長くない。集落も近いことから、万が一の場合はマシンを放棄して徒歩にて帰投、後日回収に向かうことで腹を決めたのである。


 丸山ダムからは南側の山中にある県道をつないで東へ、R418の武並橋から笠置ダム、北側の山中の県道を経由して十日神楽(潮南)の町道でR418へ降り、行ける所まで行く計画である。

 途中、木曽川南の山中、瑞浪市日吉町細久手から県道352号を北上する。実はこの県道352号、険道として有名であり、その行く末を確かめに行ったのであるが…。

  
  御覧の通り、厳重な封鎖である。
 繰り返すが、ここは林道ではない。県道である。
 かつてはオート三輪(?)も通行、その後、昭和の終り頃までは現役だったようであるが、県道指定はそのままにすっかり廃道となってしまっている。

 このままバリケードを突破して逝ってしまいたい衝動に駆られたりもするが、単独でのアタックは非常に危険である。

 

この道の走破は、ORRのへなり漂ヘド沈マズのハンターカブ、あるいはTEAM酷道の面々など、限られた勇者にのみ与えられる特権であることを思い出し、いつの日かの挑戦を誓って今日のところは一旦引き返す事にした。



 
 瑞浪市内の山中を思いがけなく迷いつつも東進、R418へ出で少しだけ北上。武並橋の北詰に通行止めの道路標識が出て来た。
 本来、八百津へ行くにはR418を通るのだろうが、思い切り「×」がしてあり、飯地方面への迂回路を示している。








 だが、こっちの看板には「大型車(車幅2.0mを越える車)通行不能」とある。
  鵜呑みにすればKDXはもとより、普通車でも通行可能ということなのだが…。



 

 通行止の標識をものともせず進んで行くと、笠置ダムを越えたところでやはり通行止めであった。


 しかもバリケードは厳重であり、左右の脇までしっかりと封鎖してある。
 これでは如何にKDXといえども突破は無理である。

 






 バリケードの上から向こう側を覗いてみた。少なくとも見えている範囲においては割合と整っているようでもあるが、実際の所、2〜3年前までは何とか通行できたようなので(勿論、オフ車や自転車。希にはジムニーが入り込んだらしいが)、本格的に廃道の雰囲気を醸し出すにはまだ早いのであろう。
 とはいえ、手前に無造作に転がっている大き目の石は、プロローグとしては十分なのではないか…。


 
 これ以上は進めないので一旦引き返し、武並橋の分岐から県道を西進、潮南から十日神楽方面へ南下する。
 その間、至る所に「熊出没注意」の看板があったが、普通に通学路である。通学路に熊が出るとはさすが八百津と思ったが、なに岐阜市北部だって数年に一度熊が出るのである。さすが八百津、ではなく、さすが岐阜と云うべきであろう。
 
 十日神楽の集落を抜ける町道を、R418まで降りてきた。
 左が降りてきた町道であり、写真は笠置ダム方面(東)を向いている。

 これが有名は町道と国道の交差点であり、見ての通り、信号は無いのである。

 写真右は木曽川への崖であるが、当然ながらガードレールは無い。繰り返すが、ここは「国道」である。

 

 R418を笠置ダム方面へ向かう。道幅が狭いこともあるが、路面がぬかるんでいて非常に怖い。スリップしてオーバーランでもしようものなら、木曽川へ一直線である。実際、一度大いに冷や汗をかいた場面があった。

 この報告書を読んで興味本位で出かけるのは自由だが、夜は絶対に止した方がいい。また、できるならば単独行も避けるべきである。
 
 
 町道との分岐から笠置ダム方向へ1〜2キロ進んだ所にある橋まで来ると、バリケードが行く手を阻んだ。
 笠置ダム側からのアプローチ同様、脇までしっかりと固めてあるので突破はできない。KDXでの進入もここまでである。

 なお、隣に見えているワンボックスは山菜取りかと思われる。山中で突然無人の車に出くわしたので、少々気味が悪かったが。

 

 ついでに言って置くと、ここまで来れば車の転回は可能だが、それまでは離合不能である。KDXと軽自動車だってどうなることやらわからない。
 車で行ってみようなどという気は起こさない方が無難である。



 橋の向こう側には、比較的新しい通行止めの看板があった。「国道418号線はここから先5500mの区間云々」と書いてあるので、笠置ダムまであと5.5kmなのであろう。
 
 この看板の効き目が全く無かったのでバリケードを建てたということか?

 どちらにせよ現状ではこれ以上進めないので、あきらめて八百津側(西)へ戻ることにする。


 
 町道の分岐を少し西へ行った所で、赤い橋が見えてきた。画面中央に赤い橋が見えているのがわかるだろうか?

 あの橋こそ、冒頭の険道352号が木曽川へと降りたところに造られた橋であり、今なお険道の一部である。

 そしてその険道は、画面手前の急斜面を駆け上がり、R418との交差点を成しているはずであるが、今回は藪にまぎれた険道側を見落としてしまった。交差点を発見できなかったのである。

 それにしても、藪にまぎれて交差点を見落としてしまう国道とは一体…。

 
 わかるだろうか?画面左上、対岸にある建物が。そしてその右下、川面にある船着場が…。
 実は木曽川のこの一帯は、風光明媚で有名な深沢峡として、昭和の終り頃まではそれなりに賑わっていたようなのである。
 建物は、廃墟マニアの間では有名な廃茶屋いさまつであり、船着場からは遊覧船が出ていたとのこと。

 いずれ新丸山ダムの完成と共に水面の下に沈むのであろうが、その前に一度訪問しておきたい場所ではある。険道352号、酷道418号の完全走破とともに。

 更にもう少し西へ進むと、冒頭の写真の場所へ到着する。


 今更ながら、通行不能と念押しされている。
 
 標識は幅員2mであるが、看板には1.8mを越える車は通行不能とあった。どちらにせよ、車で入りたくなるような道ではない。離合ヶ所が全く無いのである。
 






 
 酷道区間の西端近くにあるのが、二股隧道である。心霊スポットとして有名らしいが、ありがちな噂であろう。
 ただ、大して長い隧道ではないのだが、照明が無いこと、中でカーブしているので向こう側が見えず、常に真っ暗であることが、不気味な噂の生じる原因であると思われる。

 また、戦争中に朝鮮人を強制連行してきて掘り、過酷な労働で死んだ朝鮮人を埋めたという噂もあるようだが、これも古目の隧道にはよくある噂である。

 この隧道の開通は戦後の昭和31年であると隧道自体に銘板が付いているし、それに扁額の文字は左から右(戦後間もなくまでは右から左)へ書かれている。

 現物を見ていれば時代が合わないことが明白であるのに、なぜこのような噂がでるのか全く理解できない。というより、そもそも朝鮮人の強制連行などは存在しない。全く、ネットに限らず噂というものは無責任なものである。

 と、つまらないことで憤っているうちに、酷道区間を抜けた。


 この橋の分岐が、酷道区間の西端である。

 生還した、という実感が湧くのもここである。









 


ちなみに八百津では、岐阜より1週間ほど桜が遅いようである。見事な桜花であった。


 

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