オオムラサキ採集記


2010年7月4日
 

  ついに念願のオオムラサキを採集か!?


 6月末から7月にかけてはオオムラサキの季節。今年こそは採集したい、と思ってはいるのだが、如何せんこう出張が多くては近隣の産地、美濃加茂へポイント探しに行くことすらできない。

 が、ふと気づいた。出張先は、東京とはいえ三多摩地区。ならばオオムラサキの有名産地、山梨までは電車でいい具合の距離である。それなら、出張ついでに採集だ!

(1)7月4日(日) オオムラサキセンター

 東京へは通常、新幹線を使う。が、今回は移動日が休日なので中央線、塩尻までは特急しなので、その先は各駅停車である。
 わざわざ時間のかかる(それでも午後遅くには到着するが)中央線にしたのは、山梨の日野春駅近くにあるオオムラサキセンターへ寄るつもりだからである。
 オオムラサキセンターでは、館内のビバリウムでオオムラサキの飼育、生態展示を行っているのである。で、そこへ行くことによって実物を見、生息環境を知ることで採集の勘所を知ろうと思ったのだ。百聞は一見に如かず、である。





 塩尻駅で各駅停車に乗り換え、日野春駅には昼前に到着。名古屋を8時だから3時間ほど。早いものだ。









 駅を降りると早速!駐輪場の屋根の上に止まっているのはオオムラサキではないかぁ!!さすがオオムラサキの一大産地!
 実はオオムラサキの生体を見るのは初めてだったりするのであある。あぁ、これだけでも来た甲斐があった!でも、早速採集、と言うわけにはいかない。ここ、北杜市長坂町はオオムラサキの採集禁止地区なのだ。網による採集行為で昆虫がいなくなる訳は無いけど、一応ルールはルールだからね。



 15分くらい歩いてオオムラサキセンターへ到着。その中にあるビバリウムっていうのはまぁ、動物園によくある中で鳥が飼われている大きなゲージ(檻)だと思えばいい。この中にオオムラサキが飼育、放蝶されているのだ。








 中へ入るとオオムラサキがいた!(当たり前だな)マジマシと見るのは初めてだ。










 そしてこっちは蛹。真ん中の緑色の大きいのがそう。葉にそっくりに擬態しているが、当然ながら厚みはある。


 冒頭に書いたように、ここでオオムラサキの生態を見て採集の参考にしようと思っていたのだが、当てが外れた。ビバリウムの中は幼虫の食樹である榎が主体、成虫はそこかしこにある餌台で吸蜜しているか、ゲージにへばりついている。これじゃあ、どこに飛んでくるのか、よくわからないや…。


(2)7月10日(土) 高尾山
 午後から高尾山に登る。東京都内では、高尾山の山頂とその麓である八王子の郊外でよく採れるらしい。まずは確実なところで高尾山に行ってみることにしたのである。


 山頂まで登ると、樹液の出ている木が1本だけあり、そこにオオムラサキが来ていた!生涯2度目の天然生体との遭遇である。

 しかしさすがは高尾山、余りにも人が多すぎ網が振れない。どこからどんな難癖をつけられるか分かったものじゃないからね。
 オオムラサキはこの後すぐに飛び去って、再び現れなかったが、代わりにスミナガシがやってきて、同じく樹液にやってきたカナブンやスズメバチとケンカをしていた。
スミナガシ動画 クリック

 









この日見たのは結局その1匹だけ。その代わり、と言っては何だが珍しい(?)列車を見たので撮影w
ホリデー快速河口湖ですと。イラストがかわいい?













(3)7月11日(日) 八王子郊外
 八王子の恩方で採集できるような情報を得たので行ってみた。が、しかし。天候が悪く、オオムラサキどころか他の蝶も飛んでいない。

 結局採集できたのはラミーカミキリとこれ、ゴイシシジミ。尤も、ゴイシシジミ自体も初採集なのだが。

 昼からは天気予報通り雨、早々に採集終了。

(今、採集に行った場所の地図を見返してみると、少々山の方へ入りすぎたと反省している。幼虫の食樹である榎は川沿いに多いので、そっちを重点的に探すべきだった)





(4)7月16日(金) 猿橋
 東京出張は本日午前で終了、金及び土の2泊を甲府に宿を取り、金土日とオオムラサキ採集にあてることにした。

 中央本線、山梨の四方津から大月の間の桂川沿いで採れるのでは?という噂を聞いた(この辺りには榎が多い)ので、甲府へ行く道すがらでもあるし、採集に行くことにした。無闇に歩いてもしょうがないので、地図を見てアタリをつけ、猿橋駅の猿橋公園へ行くことに。

 だが、ダメ。気配すら見えない。この日もボウズのまま、甲府の宿へ。


(5)7月17日(土) 新府
 この日の採集候補地として、実は穴山と新府(どちらも甲府から小淵沢方面へ電車で20分くらい)のどちらにしようか迷っていた。
 事前情報ではどっちもどっちの確率のようだったが、穴山の方は今一つポイントがはっきりしなかったので新府で決定。

 朝10時過ぎから新府城址で採集開始。しかし飛んでいるのはヒカゲとジャノメばかり。なんじゃこりゃと思いつつ昼過ぎまで粘るが影も形も見えず。

 仕方が無いので城址での採集は諦め丘を降り、南側から川の方へ向かう農道へ移動した。
農道沿いには1本だけ樹液の出ている木があり、じっと見ているとあぁ!来たぁ!!

 オオムラサキが木に止まったところを見計らい、網を振ったがだめ、外した。仕方なく待っていると、10分位して再びやって来た。
 今度こそはと網を振るが、再び外す。あぁ、ダメだぁ…。

 それからまだしばらく待ってはいたが、ついにオオムラサキは現れず、電車の時間もあるので、後ろ髪を引かれる思いで新府を後にした。四度、ボウズ…
(写真は見事に逃がした後なのでオオムラサキは写っていません)


(6)7月18日(土) 穴山
 オオムラサキ採集旅行(出張のついでだってばw)の最終日。
 昨日オオムラサキを見た新府で確実なところを狙うか、それとも一発逆転で穴山へ行くか。新府ではこの日、日本アンリ・ファーブル会の採集会があるので、それとかち合うとちょっといやらしい。一方、穴山の方は、昨夜から今朝にかけて、ネットで必死にポイントを探し(パソコン持ち歩いててよかった〜)、某大学サークルのHPから大体の見当をつけることができた。 後は賭けだな、と思いつつ、穴山へ行くことに。

 穴山のポイントへは駅を降りて30分ほど歩く。
 

 何となくこの辺か?と思いながら歩いていると、前方に同業者発見。
 筑波から来たとのことだが、狙いは同じくオオムラサキ。
 彼らのネットの先、上の方を見ると…










 いたぁっ!!!!!!(3匹いるのがわかるだろうか)

 ・・・しかしこの高さでは届かない・・・

 上の写真でも分かるように、件の同業者は長竿を使っている。一方こちらと言えば1.5mの網1本。届くわけが無いのである(悔しいので後日長竿を購入した)。

 でもそこはそれ、オオムラサキとて常に梢の上を飛んでいる訳ではない。たまには低く飛ぶヤツもいるし、それより何より長竿から逃れたのがちょうどいい塩梅の高さへ降りてくる。



 やった!ついに念願の初採集!!
 長竿を逃れて舞い降りてきたヤツだ(これを「落穂拾い戦法」というw)。
 それにしても暴れ方が凄い。さすが日本三大巨蝶の一つである(あとの二つはナガサキアゲハとクロアゲハ)。

 結局この日は、この1匹も含めて♂ばかり6匹採集、うち1匹は欠けのためリリース。それでも十分満足のいく成果だ。





午後遅くに穴山を発って、帰宅したのは9時近く。眠い目をこすりながら、それでも早速標本に。
長年の念願がかない、至福の一時であるw



(7)7月23日(金)、24日(土) 穴山(補遺その1)
 オオムラサキはご存知の通り、♂の発生が♀よりも10日ほど早い。で、先週はまだ♀の発生には早かったらしい。こうなれば♀も欲しくなるのは人情というもの(笑)、再び出張を利用してオオムラサキ採集行であるw

 実は、穴山は灯火採集でも有名らしい。また、オオクワガタもいるとかいないとか…。

 で、だ。せっかくなので灯火採集も試みてみることにした。
 宿は?ええ、寝袋持って来ましたよ、勿論野宿。
 出張?ホントは日帰りなので、用事は終わりました。

 しかし、寝袋持って出張帰りに野宿するヤツもそうザラにはいまい(爆)

 で、灯火採集の成果だが、今一つ。ノコギリカミキリと種類のわからないクワガタの♀、が主要な成果で後はザコだった。


←なんだかボケているが、寝ていたのはホームにある待合所の中。

       だいたいこんな感じである→
 ちなみに風呂は前日の夕方、出張先のT川の銭湯で済ませた。夕食と朝食は、同じくT川の弁当屋の弁当を持参(微妙に賞味期限を過ぎたが気にしない)、昼は菓子パンである。ちなみに水はスポーツドリンク1.5リットル(経験上、これで必要かつ十分なのだ)を持参。言っておくが、穴山駅周辺には商店は無い。自販機はあるので水分の補給はできるが、それだけである。駅近くに食堂があるらしいが、営業しているかどうかは確かめていない。

 駅でぼんやりしていてもしょうがないので、早速採集ポイントへ移動。

 が、しかし。が〜ん!!!
 一番よく採れた木(樹液がたくさん出ている)に、先週は無かった看板が立っている。でもどうやらこの木、私有地(?)の中に生えているようだ。
 このあたりは特に採集禁止ではないはず(境界ギリギリだけどね)だし、ならばこの木に止まっているのではないオオムラサキを採集すればよかろう。
(あえて言っておくが、網での採集というレベルで昆虫は減少したりはしない)

 と言いながら、思惑通りに♀を数匹採集。やはり先週は時期が早かったようだ。ちなみに♀は♂よりも一回り大きく、♂ではムラサキになる部分が黒い色をしている。これで標本に♂♀そろったぞ、と。

 朝もまだ早いがどうするかな、と思っていると珍しく携帯が鳴った。本HPではKDXのところでよく出てくるリターン氏(@5児の父)である。実は彼もなかなかの虫マニアなのだが、先週の私の報告を聞いていてもたってもいられず、早朝岐阜を車で出発、間もなく到着すると言う。
 それでは、と氏を待ち、到着した(しかも子供3人付きw)ところで再び採集開始。採れるは採れるは、やはりここはオオムラサキの宝庫である。というより、時期と場所と天候を間違わなければ、オオムラサキなんて普通にいるんじゃないのか?採取禁止なんて絶対に間違ってるよな。

 昼の合図に、なぜか山梨の山の中で町内放送で流される「我は海の子」を聞きながら、昼食。しばらく遊んだあとで、帰宅することにする。本当は電車の切符を買ってあったのだが、リターン氏の好意に甘えて車に同乗。途中、土岐〜多治見の辺りで外気温度計が40℃を指すのを見ながら無事帰宅した。それにしても穴山、また行きたいなぁ。


(8)8月8日(日) 穴山(補遺その2)
 三度穴山である(笑)。今回は、出張の中日の休日。
 実はオオムラサキはもういい(採れすぎ)と思っていたのだが、新兵器である長竿4.6mの威力を試したかったのと、それから、ここではルリボシカミキリが採集できるのである。

 だが、食傷気味と言えるほどに溢れ返るオオムラサキを尻目に、何となくそれらしいのが飛んでいるのを一度見たきり。結局、またもやオオムラサキの♀を2匹ばかりと、コムラサキ、ルリタテハなどどうでもいいような普通種を旅の記念に採集して終わった。

 あぁ、来年はオオムラサキではなくルリボシカミキリ目当てで来なくちゃ!


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