しらせ 5002と5003
2011年10月1日
 

 東日本大震災の影響で延び延びになっていた初代しらせ見学。ところが待てば海路の日和あり、初代しらせと二代目しらせが同時に見学できるイベントがあったので、これを逃す理由も無く、大喜びで行ってきた。

 戦後日本の南極観測は、宗谷(昭和32年〜昭和37年。船の科学館に現存)、ふじ(昭和40年〜昭和58年。名古屋港に現存)、しらせ(艦番5002、初代。昭和58年〜平成20年。現在はウェザーニュース社所有)、しらせ(艦番5003、二代目。平成21年〜、現役)で行われてきた。
 これらは、一般には南極観測船と言われたりもするのだが、宗谷は海上保安庁所属(船番PL107)の砕氷船であり、ふじ(艦番5001)以降は海上自衛隊所属の砕氷艦である。ただし、(宗谷を除く)建造予算の取得は文部科学省、就役後の活動内容は国立極地研究所の支援である。

 宗谷とふじは何回か見学したことがあるのだが、しらせ5002は未見。退役後、ウェザーニュース社が買い取り、船橋港で一般公開されていたのでそのうちに行こうと思っていたのだが、3/11の大震災のため埠頭にも影響が出て一般公開は中止となってしまった。

 ところが、9/30〜10/2の3日間だけ、「一緒に地球の未来を考えよう」(ウェザーニュース社だからね、温暖化とかの話題だな)というイベントがあり、そこで公開されるという情報を得た。しかも、現役のしらせ5003とセットでだ! これはもう行くしかあるまい。

 さて、当日は夜勤明け。出張先のホテルへ戻っているヒマは勿論無いので、睡眠は電車の中でとることにして船橋駅へと向かう。
(余談だが船橋市には、船橋駅のほかに西船橋、東船橋、南船橋、新船橋、更には京成船橋と京成西船、船橋競輪場と、「船橋」とつく駅がたくさんあってややこしい)

 船橋駅からはシャトルバス、20分程で埠頭に到着。
 バスを降りるとおお、目の前、左に5002、右に5003がいるではないかぁ!
(注:5002はウェザーニュース社の所有となるとともに、艦名を「しらせ」から「SHIRASE」に変更。更に、艦長を「KANCHO」ということにしたらしい。こういう、アルファベットを使ったりはたまたカタカナで書いてみたりするセンスって、どうなんだろう)


 5002(左)と5003(右)の艦首の違い。5003の方が丸っぽい。用途は同じ、排水量もほぼ同じなのに、なぜこういった違いがでてくるのか、設計者を問い詰めたくなる。



 

 見学は5003から。天気が悪いし(寒い)朝も早いので人はまだ少ない。型通りの持ち物検査(自衛艦だからね)をして、搭乗。












 艦尾には自衛艦旗。帝国海軍の時代より、我国の戦船には軍艦旗が掲げられる。












 後部の飛行甲板と格納庫。搭載機はCH−101を2機、AS355を1機だそうだ。
 CH−101はアグスタウェストランドのEH−101の改造機で、川崎重工でライセンス生産されている。海上自衛隊では、他に、この機体を機雷掃海用として改造したMCH−101も保有している。









 格納庫内の展示は南極の石やら、ペンギンの実物大人形(!)やら。

 唯一興味を惹いたのが、歴代南極観測船の模型。
 右から開南丸(日本の南極探検隊、白瀬 矗(しらせ のぶ)陸軍中尉の乗船)、宗谷、ふじ、しらせ5002、しらせ5003。ふじからしらせで一足飛びに船型が大きくなっているのが分かる。また、5002にくらべて5003の艦首が丸みをおびているのが分かるだろう。

 しかしこうやって比べてみると、開南丸や宗谷なんていうちっぽけな船で、よくもまあ南氷洋にまで行ったなぁ。














 艦橋にも入れたが、ここには人が溜まっていて、何が何やら(笑)
 ちなみに手前の子供が座っている椅子は、副長(海軍では副艦長や副隊長といった言い方をしない)用だ。










 副長席は白カバーだが、右舷側にある艦長席は赤カバー。ただし、椅子自体の作りは同じもののようだ。












 南極観測隊員の部屋。この広さで二人部屋は狭い気がするが、宗谷では同じくらいのスペースに4人が押し込められていたような記憶がある。人間関係を考えると、4人部屋の方がいいんだけどね。二人では、気まずくなった時に逃げ場がない。










 何と、喫煙室がある。船だと自分の家みたいなものなので、何となくどこでも吸えるような気がしていたが、これもご時世か。
 酒も飲めない(*)、煙草もこの有様では、長丁場でちょっとかわいそうな気もする。

 (*:自衛艦内では、航行中は禁酒なのだ。帝国海軍では、飲酒は許されていたのだが(勿論時間は限られるが)、海上自衛隊になってからは米国海軍に倣って禁酒になってしまった。海上自衛隊の、帝国海軍の伝統と異なる部分というのは、珍しいと思う)








 銘板(銘板マニアw)。舞鶴(福井県)のユニバーサル造船で2009年に就役したと書いてある。












 艦歴もキチンと銘板で表示。これって、他の自衛艦にもあるのかな?曰く「xx海戦参加」とかね(笑)。
















 小一時間で5003の見学は終了、5002へ向かう。













 昼前になったので少し混んで来ました。5002はウェザーニュース社の社屋(?)として使われているので、一部部屋は生きているのだが、その他の部屋を当時のまま残して一般見学の用にあてている。











 いきなり艦内、南極観測隊員の部屋。二人部屋であるところは5002と同じだが、ベッドもロッカーも木製であるところが時代を感じさせる。木製の方が、例え安っぽいものでも温かみがあって良いのだが、船火事の時に燃えるのである。

 ちなみに手前の赤いのは洗濯ロープ、それに掛かっている白はハンガーである。







 恐怖の散髪屋、タイガーカットハウスしらせ本店。ベタだが笑える。
 航海は長期にわたるので、散髪屋、医務室、歯科医務室は揃っている。










 船内の食堂と思しきところで歴代南極観測船の展示があった。5003よりは大きい模型なので、くどいかもしれないが掲げておく。まずは開南丸(左)。









(上左)宗谷 (上右)ふじ
(下左)しらせ5002 (下右)しらせ5003
こうやって比べると大きさの違いは分からないが、ディテイルの違いは良く分かると思う。




 5002の飛行甲板と格納庫。搭載機はS−61AとOH−6Dとのことなので、5003のMCH−101よりは一回り小さい機種を使っているようだ。











 船橋(もはや民間籍であり自衛艦ではないので、艦橋ではない)風景。











5003から見た5002(左)と、5002から見た5003(右)。やはり5003の方が丸っぽい。
かつ、5003は2本煙突だ。



 これはテレグラフといって、機関室に対して出力の指示をするもの。5002は3軸(スクリューが3つ)なので、テレグラフも3つある。











 格納庫内の展示。シャッターが下りていると思ったら、中はこうなっていた。ちょっと残念?












最後にオマケ。5002の通路からぶら下がっていたハロモドキ。
ウェザーニュース社のマスコットキャラクターらしいけど、名前は忘れた。 

(ちなみにこの後、徹夜明けにも関わらず、新宿で映画はやぶさを見てきた。その上明日はモトGPツアーだ!)

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