ロイヤルウイング


2010年2月27日
 

 横浜大桟橋を拠点とするクルーズ船、ロイヤルウイング。その前身は瀬戸内海の女王と呼ばれた関西汽船のくれない丸である。ちょっとした偶然からその懐かしい名前に出会い、そして乗ってみることにしたのである。

 横浜大桟橋を拠点とするクルーズ船、ロイヤルウイング。その前身は瀬戸内海の女王(大阪〜別府間に就航)と呼ばれた関西汽船のくれない丸である。昭和34年、三菱重工神戸で建造された彼女(船は女性名詞である。これは洋の東西を問わない)は排水量2900トン、速力19ノット。近年、内航で使われている数千トンから1万トン級のカーフェリーに比べれば小柄だが、内航客船(乗客のみで貨物や車は乗せない)の悼尾を飾る船であり、その意味では決して小さいものではない。また、客船であったが故に、彼女は船齢50年を数えてもなおクルーズ船として現役で活躍していられるのである。

 実は、この船に乗るのは初めてではない。船乗りだった父が、私が幼少の頃、乗り組んでいたのがこの「くれない丸」だったのだ。実に40年ぶりの邂逅である。父はよく「船員食堂のテーブルの上を(私が)飛び回って遊んでいた」という昔話をするが、なに、こっちはそんなことまでは憶えちゃいない(笑)。 


 などと思ひ出に浸りながら歩いているうち、大桟橋に着いた。歩道は船のデッキを思わせる木製だ。









 乗船時間まで一休み。待合室には2m程の模型が飾ってあった。往時とはファネルマーク(注)が違うとはいえ、まさしく「くれない丸」である。お懐かしゅう!








注:煙突の塗装(マーク)をファネルマークという。これは船会社毎に定まっていて、世界で同じマークは二つと無い。当時の関西汽船は、緑色に太い白線が巻かれたものだった。ちなみに、この習慣は航空会社にも受け継がれており、垂直尾翼のマークは同じものが二つと無いのである。



 今回参加したのはバックヤード・ツアーとそれからティー・クルーズ。
 バックヤード・ツアーはその名の通り舞台裏、厨房や機関室、ブリッジ(船橋。船を操縦するところ)を見学するツアーである。







 料金は数百円なのだが、それを支払うとティー・クルーズの乗船料2200円也が無料、食事代金のみで船遊びができるのだ。まともにランチやディナーのクルーズに乗ると乗船料込みで数千円取られるのでとてもお得である。しかも、バックヤード・ツアーには数百円相当のお土産が付いてくるので、実質無料である(笑)



 実は、船内の写真は多くない。懐かしさでウルウルだったので
(^^;

 これは船首部のホールである。右手に見えている舷窓(丸窓)が、上写真の「ロイヤルウイング」の「ロイ」の下に見えている。元々は倉庫だった区画を改造したようだ。






 船内から船外へ。これは前甲板、ホールの上になる。黒い機械はキャプスタンと言って、舫綱(もやいづな)を巻き取る装置。










 そして船首から望むブリッジ(船橋)。次はあそこへ行く。




 ブリッジ。船の操舵はここで行われる。左舷から右舷へ、橋を渡したような構造になっているからブリッジ(橋)という。40年前と寸分違わない、かどうかは記憶が定かではない。









 舵輪、車で言うハンドルだ。その上には羅針盤(コンパス)がある。左側にはテレグラフ(後述)。

 船(艦)の場合、船(艦)長が舵輪を操作しているわけではない。あくまでも号令をかけるだけで、舵輪は操舵員が操作する。
 蛇足だが、故に海軍の飛行機の場合、パイロット(操舵する者
)が機長とは限らない。機長とはあくまでもそれに対して号令をかける者であり、操舵員=機長とする空軍(陸軍)とは伝統が異なるのである。



 舵輪上にある羅針盤。船長が、「進路xx度」と号令をかけると、操舵員がその進路になるように舵輪を動かすのである。









 テレグラフ。エンジンの出力を機関室に伝えるものである。エンジンは2基なのでレバーも2本、これと同様のものが機関室にあり、操舵室でテレグラフを操作すると、機関室のテレグラフもベルを鳴らしながら同じ位置まで針が動く。その指針を見て、機関員がエンジンのバルブ等を調整し、所定の出力とするのである。決してテレグラフが直接エンジンを操作しているわけではない。
 ちなみに赤字はASTERN(後進)、白字はAHEAD(前進)である。文字は順にDEAD SLOW(微速)、SLOW(原速)、HALF(半速)、FULL(全速)である。車と違い、細かく速度を調整するものではないのでこれで十分なのだ。




 とっても分かりにくいが機関室。懐かしの機関員控室には降りなかったが、中央の階段の向うに見えているのが恐らくそれである。左右にはエンジンのシリンダヘッドが見えている。

 かつての父の仕事場がここだ。










 バックヤードツアーが終わると一旦下船。改めてティー・クルーズとして乗船する。



 





 ティー・クルーズのメニューは何種類かあるのだが、飲茶セット
(¥2940、アルコール付き)を選択。値段は高目だが、中々美味ではある。




 酒に弱い私は中ビン1本ですっかり出来上がってしまい、気づけば2時間の航海のうち、すでに帰りのベイブリッジにさしかかっていた。











 ベイブリッジを越えて湾内に入る。左の方に見えているのは横浜マリンタワー。(動画は回頭中のもの)

 当日は天候を心配していたのだが、乗船終了までは何とか持った。だがおかげで、2月の海風も冷たくはない。







 これは船上から見た横浜の、観覧車がある辺り。











 そしてまもなく元の大桟橋へ接岸。2時間の、センチメンタルジャーニーの終わり。










 下船。さようなら、くれない丸、また会う日まで。
















バックヤードツアーのお土産、ピンバッジ

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